この記事でわかること
そもそも不動産の価格交渉はできるもの?
多くの人が「不動産の価格は決まっていて、値引き交渉なんてできないのでは?」と思いがちです。
しかし、実際には多くの物件で価格交渉の余地があります。
特に、個人が売主である中古物件の場合は、交渉に応じてくれるケースが少なくありません。
大切なのは、不動産取引における価格交渉が特別なことではないと理解し、正しい知識を持って臨むことです。
なぜ価格交渉の余地があるのか?「売出価格」の仕組み
不動産の「売出価格」は、必ずしも最終的な売買価格ではありません。
多くの場合、売主は価格交渉があることを見越して、希望する売却価格に少し上乗せした金額を「売出価格」として設定しています。
これは、交渉によって多少の値引きをしても、最終的に希望額で売却できるようにするためです。
「売出価格」の構成要素(一例) | 説明 |
---|---|
売主の希望売却価格 | 売主が最終的に手元に残したいと考える金額です。 |
交渉を見込んだ価格 | 値引き交渉に応じるための、いわば「バッファー」となる金額です。 |
仲介手数料などの諸費用 | 売却にかかる費用を考慮して上乗せされる場合があります。 |
このように、売出価格の仕組みを理解することで、価格交渉が売主にとって必ずしも失礼な行為ではないことが分かります。
【交渉の前に】成功率をグッと上げる5つの準備
不動産の価格交渉は、いきなり「安くしてください」とお願いしても成功しません。
成功の鍵を握るのは、交渉の席につく前の徹底した準備です。
これから紹介する5つのステップを丁寧に行うことで、交渉の成功率を格段に高めることができます。
準備を万全に整え、自信を持って交渉に臨みましょう。
1. 適正価格を知るための相場調査
交渉の最も強力な武器は、客観的なデータです。
購入を検討している物件が、周辺の類似物件と比べて割高なのか、妥当なのかを把握することが第一歩となります。
インターネットを使えば、専門家でなくても相場を調べることが可能です。
以下のサイトやツールを活用して、物件の適正価格を見極めましょう。
調査方法 | チェックするポイント |
---|---|
国土交通省「不動産情報ライブラリ」 | 実際に取引された成約価格が分かるため、信頼性が非常に高いです。 |
不動産情報サイト(SUUMO、アットホームなど) | 似た条件(エリア、広さ、築年数など)の物件がいくらで売り出されているか確認できます。 |
これらの情報をもとに、「このエリアの類似物件は〇〇円で成約しているので、この価格が妥当だと考えます」というように、根拠のある交渉が可能になります。
2. 交渉の材料になる物件情報の精査
物件を内覧する際は、良い点だけでなく、交渉の材料になり得る点も冷静にチェックしましょう。
ただし、売主への配慮を忘れず、客観的な視点で確認することが重要です。
修繕が必要な箇所が見つかれば、それが価格交渉の有効な材料になります。
室内の状況
- 壁紙の汚れや剥がれ
- 床の傷やきしみ
- キッチンや浴室、トイレなど水回りの設備の古さや不具合
建物の状況
- 外壁のひび割れや塗装の剥がれ
- 雨漏りのシミの有無(特に天井や窓サッシ周辺)
周辺環境
- 日当たりの状況(時間帯による変化)
- 近隣からの騒音や臭い
- 窓からの眺望
これらの点を指摘する際は、「リフォームに〇〇円ほどかかりそうなので、その分を考慮いただけないでしょうか」というように、具体的な費用とセットで伝えると説得力が増します。
3. 交渉に最適なタイミングの見極め
価格交渉は、タイミングも非常に重要です。
売主が「早く売りたい」と考えているタイミングを狙うことで、交渉が有利に進む可能性が高まります。
交渉に有利なタイミング(例) | 理由 |
---|---|
売り出し開始から3ヶ月以上経過 | なかなか売れない場合、売主が価格の見直しを検討し始める時期です。 |
売主が転勤や相続を控えている | 売却期限が決まっているため、多少の値引きをしてでも早く契約したいと考える傾向があります。 |
不動産会社の決算期(3月、9月) | 会社として売上目標を達成したいため、契約をまとめるために積極的に動いてくれる可能性があります。 |
空き家になっている物件 | 固定資産税や管理費がかかり続けるため、売主は早く手放したいと考えていることが多いです。 |
これらの情報は、仲介する不動産会社の担当者に「売主様は何かご売却をお急ぎの事情がおありですか?」などと、それとなく確認してみるとよいでしょう。
4. 「購入できる」証明としての住宅ローン事前審査
価格交渉の場で、売主が最も重視することの一つが「この人は本当に買ってくれるのか?」という点です。
「値引きだけさせて、結局ローンが通らず買えませんでした」となることを売主は非常に恐れています。
そこで強力な武器となるのが、住宅ローンの「事前審査」です。
事前審査のメリット | 説明 |
---|---|
購入意欲の証明 | ローン審査という手間をかけていることから、本気で購入を検討していることが伝わります。 |
支払い能力の証明 | 金融機関から「この人には融資できます」というお墨付きを得ているため、売主は安心して交渉に応じられます。 |
交渉の信頼性向上 | 「ローンも承認済みで、価格さえ合えばすぐにでも契約できます」という姿勢は、交渉を有利に進める大きな要因となります。 |
購入申込書を提出するまでに事前審査を済ませておくことで、他の購入希望者よりも一歩リードすることができます。
5. 譲れない条件と妥協点を決めておく
交渉を始める前に、必ず家族で話し合い、自分たちの希望条件を整理しておきましょう。
交渉の場で感情的になったり、相手のペースに流されたりするのを防ぐためです。
あらかじめ交渉の軸を決めておくことで、冷静な判断ができます。
希望価格
- 理想価格:この金額なら即決できるという理想の価格
- 最低ライン(指値):交渉で提示する、最も低い希望価格
- 上限価格:これ以上は出せないという最終的なデッドライン
価格以外の条件
- 譲れない条件: 引き渡し時期、残してほしい設備(エアコンなど)
- 妥協できる条件: 一部の修繕は自分たちで行う、など
これらの条件を明確にしておくことで、交渉がスムーズに進み、後悔のない決断に繋がります。
【実践編】円満に進める不動産価格交渉の具体的なテクニック
準備が整ったら、いよいよ交渉の実践です。
ここでのポイントは、あくまで「交渉」であり「ケンカ」ではないということです。
売主や不動産会社と良好な関係を保ちながら、お互いが納得できる着地点を見つけることを目指しましょう。
具体的な伝え方や金額の目安を解説します。
交渉を切り出すベストなタイミングは「購入申込時」
価格交渉を切り出す最も適切で正式なタイミングは、「購入申込書(買付証明書)」を不動産会社に提出するときです。
購入申込書には、希望購入価格を記入する欄があります。
ここに、準備段階で決めた「指値(さしね)」を記入することで、正式に価格交渉の意思表示となります。
⚠️ 注意事項
内見の際にその場で価格の話をしたり、電話で気軽に値引きを要求したりするのは、相手に良い印象を与えないため避けるのが賢明です。
丁寧な伝え方と切り出し方の例文【メール・対面】
交渉の意思は、仲介する不動産会社の担当者を通じて売主に伝えられます。
担当者にこちらの意図を正確に理解してもらい、売主にも良い印象を持ってもらうための伝え方が重要です。
良い伝え方(〇) | 悪い伝え方(×) |
---|---|
「物件を大変気に入っており、ぜひ購入したいと考えております。ただ、リフォーム費用も考慮する必要があり、大変恐縮ですが、〇〇円でお譲りいただくことは可能でしょうか。」 | 「この物件、〇〇円じゃないと買いません。」 |
「周辺の成約事例を拝見しますと、〇〇円が相場のようです。その点を踏まえ、こちらの価格でご検討いただけますと幸いです。」 | 「相場より高いですよね?もっと安くしてください。」 |
💡 ポイントは以下の3つです
1. 購入したいという真剣な意思をまず伝える
2. 価格交渉を希望する理由を客観的に説明する
3. 「恐縮ですが」「ご検討いただけますと」など、相手を敬う丁寧な言葉を選ぶ
効果的な交渉材料の提示方法
準備段階で集めた情報を、交渉の場で効果的に使いましょう。
ただ欠点を並べ立てるのではなく、購入への前向きな姿勢とセットで伝えることが大切です。
相場データを提示する場合
「国土交通省のデータで、近隣の類似マンションが〇ヶ月前に〇〇円で成約しているようです。この情報を参考に、今回の価格をご提示させていただきました。」
物件の状況を伝える場合
「水回りの設備が20年以上経過しており、入居後に交換が必要と考えています。そのリフォーム費用として〇〇円を見込んでおり、その点を価格にご配慮いただけると大変ありがたいです。」
このように、具体的な数字や客観的な事実を根拠にすることで、交渉の説得力が格段に増します。
値引き額の目安は?相場は物件価格の何パーセント?
多くの人が気になる値引き額の目安ですが、一概に「〇〇%」と決まっているわけではありません。
物件の状況や売主の事情によって大きく変動します。
一般的には、売出価格の3%~5%程度が交渉の現実的なラインと言われることが多いです。
売出価格 | 値引き額の目安(3%~5%) |
---|---|
3,000万円 | 90万円 ~ 150万円 |
4,000万円 | 120万円 ~ 200万円 |
5,000万円 | 150万円 ~ 250万円 |
ただし、これはあくまで目安です。
人気エリアの築浅物件などでは交渉が難しい一方、長期間売れていない物件では目安以上の値引きが実現することもあります。
相場調査の結果を元に、現実的な金額を提示することが成功への近道です。
価格だけじゃない!諸費用や設備に関する条件交渉
価格そのものの値引きが難しい場合でも、諦める必要はありません。
購入にかかるトータルコストを抑えるための「条件交渉」という方法があります。
売主にとっても、価格を大きく下げるよりは受け入れやすい場合があります。
付帯設備の交渉
「現在設置されているエアコンや照明器具、カーテンなどをそのまま譲っていただけないでしょうか。」
修繕に関する交渉
「壁紙の張り替え費用を、売主様にご負担いただくことは可能でしょうか。」
諸費用の交渉
土地の測量費用や、ハウスクリーニング費用などを売主に負担してもらえないか交渉する。
引き渡し時期の調整
売主の引っ越しの都合に合わせることで、価格交渉を有利に進められる場合があります。
価格交渉と合わせて、これらの条件についても柔軟に検討してみましょう。
【物件種別】中古戸建て・マンション・土地の価格交渉ポイント
購入を検討している物件の種類によって、交渉で注目すべきポイントが異なります。
ここでは「中古マンション」と「中古戸建て」に絞って、それぞれの交渉のコツを解説します。
中古マンション:修繕積立金や管理状況もチェック
中古マンションの価値は、部屋の中だけでなく、建物全体の管理状態に大きく左右されます。
内覧や書類確認の際には、以下の点をチェックし、交渉材料にできないか検討しましょう。
長期修繕計画の有無と内容
計画が適切か、必要な修繕が予定通り行われているか。
修繕積立金の積立状況
積立金が不足していると、将来的に一時金の徴収や管理費の値上がりのリスクがあります。
管理組合の運営状況
理事会が機能しているか、滞納者の有無などを確認します。
もし管理状態に懸念点があれば、「将来的な修繕費用のリスクを考慮して…」と交渉の材料にすることができます。
中古戸建て:ホームインスペクション(住宅診断)の活用
中古戸建てで最も心配なのが、雨漏りやシロアリ、建物の傾きなど、目に見えない部分の欠陥です。
そこで有効なのが、専門家による「ホームインスペクション(住宅診断)」です。
購入申し込み後、契約前にホームインスペクションを実施し、その結果を交渉に活用します。
ホームインスペクションのメリット
• 専門家の目で欠陥を発見できる
• 客観的な交渉材料になる
• 購入後の安心感
もし診断で修繕が必要な箇所が見つかった場合は、「専門家の診断で〇〇の修繕に〇〇万円が必要との結果でした。この費用分を価格から差し引いていただくことはできませんか」と、具体的な交渉が可能になります。
絶対に避けたい!価格交渉でやってはいけないNG行動
価格交渉を成功させるためには、テクニックだけでなく、避けるべき行動を知っておくことも同じくらい重要です。
売主や不動産会社との信頼関係を壊してしまうと、交渉がうまく進まないばかりか、最悪の場合、売ってもらえなくなる可能性もあります。
⚠️ 円満な取引のために、以下の行動は絶対に避けましょう。
高圧的な態度や売主へのダメ出し
交渉の基本は、相手への敬意です。
「この家は〇〇がダメだ」「こんな状態では高すぎる」といった、物件や売主を一方的に非難するような言動は絶対にやめましょう。
相手も人間ですから、気分を害してしまえば「この人には売りたくない」と思われてしまいます。
あくまで冷静に、客観的な事実(相場データや物件の状況)に基づいて、丁寧な言葉で交渉することが大切です。
根拠のない大幅な値引き要求
相場を無視した、あまりにも大幅な値引き要求は、売主に「購入する気がない冷やかし客だ」と判断されてしまいます。
そうなると、真剣に取り合ってもらえず、交渉の機会そのものを失ってしまうかもしれません。
事前にしっかりと相場を調べ、現実的な範囲内での価格を提示することが、真剣な購入希望者であるという意思表示にもなります。
不動産価格交渉を成功に導く最強の味方!信頼できる会社の選び方
ここまで様々な準備やテクニックを解説してきましたが、不動産取引の初心者がすべてを一人で完璧に行うのは困難です。
そこで最も重要になるのが、買主の立場に立って親身にサポートしてくれる、信頼できる不動産会社の担当者を見つけることです。
良い担当者は、売主との間に入り、交渉を円滑に進めるための強力な味方となってくれます。
買主の利益を最大化する「エージェント制」という選択肢
従来の不動産仲介では、一人の担当者が売主と買主の両方を担当する「両手仲介」が一般的でした。
しかし、この場合、担当者は双方から手数料を得るため、必ずしも買主の利益だけを考えてくれるとは限りません。
そこでおすすめしたいのが、買主側の代理人として、買主の利益を最大化するために動いてくれる「エージェント制」を採用している会社を選ぶことです。
実際に、福岡県でエージェント制を導入している株式会社ハウスマーケットを利用したC様からは、こんな声が寄せられています。
「ハウスマーケットのエージェントは、私たちの立場に立って親身に相談に乗ってくれ、他社では教えてくれなかった物件のデメリットも包み隠さず教えてくれた。おかげで後悔のない住まい選びができた」
このように、買主の利益を第一に考えてくれるエージェントは、価格交渉においても心強いパートナーになります。
まとめ:自信を持って理想の住まいを。満足できる不動産購入のために
不動産の価格交渉は、決して難しいものでも、失礼なものでもありません。
正しい知識を身につけ、丁寧な準備を行い、敬意を持って臨めば、成功の可能性は十分にあります。
最後に、この記事のポイントを振り返ってみましょう。
🎯 価格交渉成功の6つのポイント
- 交渉の前に5つの準備を徹底する(相場調査、物件精査、タイミング、ローン審査、条件整理)
- 交渉は「購入申込時」に、丁寧な言葉で切り出す
- 客観的なデータや事実を根拠に、現実的な価格を提示する
- 価格だけでなく、設備や諸費用などの条件交渉も視野に入れる
- 売主への敬意を忘れず、NG行動は絶対に避ける
- 買主の立場に立ってくれる、信頼できる不動産会社をパートナーに選ぶ
価格交渉は、単に購入費用を抑えるだけでなく、物件と価格に心から納得し、満足感を持って新生活をスタートさせるための大切なプロセスです。
この記事が、あなたの理想のマイホーム探しの成功に繋がることを心から願っています。