なぜ？「同じ物件を違う不動産会社」が紹介できるカラクリ

まず、多くの人が最初に抱く「なぜ同じ物件を違う会社が扱えるの？」という疑問から解消していきましょう。
これは決して怪しいことや珍しいことではなく、不動産業界の標準的な仕組みに基づいています。
その中心にあるのが「レインズ」と呼ばれる情報システムです。

不動産業界の情報共有システム「レインズ」とは

レインズ（REINS）とは、国土交通大臣から指定を received不動産流通機構が運営する、不動産会社専用の情報ネットワークシステムです。
簡単に言えば、「不動産会社だけが見られる巨大な物件データベース」のようなものです。

売主や大家さんから物件の売却・賃貸の依頼を受けた不動産会社は、このレインズに物件情報を登録することが宅地建物取引業法で義務付けられています。
そして、全国の不動産会社はこのレインズを見ることで、登録されているほぼ全ての物件情報にアクセスできるのです。

この仕組みがあるため、あなたがポータルサイトで見かける物件は、多くの不動産会社が紹介できる状態になっているのです。

「おとり広告」との違いと見分け方

ただし、同じ物件が複数掲載されている状況の中には、注意すべき「おとり広告」が紛れている可能性もあります。
おとり広告とは、既に契約済みで実際には紹介できない物件を掲載し続け、顧客を呼び込むための不正な広告手法です。

正常な複数掲載とおとり広告は、以下のポイントで見分けることができます。

もしおとり広告かも、と感じたら、その不動産会社とは距離を置き、別の会社に同じ物件の空き状況を確認してみるのが賢明です。

実はこんなに違う！不動産会社によって変わる3つの重要ポイント

「どの会社も同じ物件を扱えるなら、どこに頼んでも結果は同じでは？」と思うかもしれません。
しかし、それは大きな間違いです。
物件自体は同じでも、どの不動産会社を選ぶかによって、あなたが支払う費用や購入の満足度は大きく変わります。
ここでは、特に違いが生まれやすい3つの重要ポイントを解説します。

①【一番の差】仲介手数料と諸費用の総額

不動産会社によって最も明確な差が出るのが、仲介手数料をはじめとする「諸費用」です。
不動産売買の場合、仲介手数料の上限は「売買価格×3%＋6万円＋消費税」と法律で定められていますが、下限はありません。
そのため、会社によっては「仲介手数料半額」や「諸費用込み価格」といったキャンペーンを行っている場合があります。

また、購入時の諸費用の見積もりには、不動産会社が独自に設定する項目が含まれていることも少なくありません。

このように、特にオプション項目が知らぬ間に上乗せされ、総額が数十万円も変わるケースがあります。
必ず複数の会社から見積もりを取り、詳細な内訳を比較することが重要です。

②【満足度を左右】担当者の提案力と価格交渉力

物件は同じでも、担当者のスキルや姿勢によって、あなたの不動産購入体験は天国と地獄ほど変わります。
優秀な担当者は、あなたの良きパートナーとなってくれます。

特に売買価格の交渉は、担当者の交渉力と売主側との関係性にかかっています。
良い担当者に出会えるかどうかは、満足のいく購入契約を結ぶ上で非常に重要な要素です。

③【意外なメリット】独自のサービスや住宅ローン優遇

不動産会社は、他社との差別化を図るために、独自のサービスや住宅ローンの優遇制度を提供していることがあります。

これらの付加価値も考慮に入れることで、トータルでかかる費用を大きく抑えることが可能です。
物件情報だけでなく、各社が提供している購入サポート内容もしっかりと比較検討しましょう。

【完全ガイド】同じ物件でベストな不動産会社を見つける実践5ステップ

ここからは、理論だけでなく、あなたが実際に行動するための具体的な手順を5つのステップに分けて解説します。
このガイドに沿って進めることで、情報に振り回されることなく、主導権を握って最も賢い選択ができるようになります。

ステップ1：気になる物件をポータルサイトでリストアップする

まずはSUUMOやHOME’S、アットホームなどの不動産ポータルサイトで、希望のエリアや条件に合う売買物件を探し、いくつか候補をリストアップしましょう。
この段階では、まだ不動産会社を意識する必要はありません。
純粋に「この物件いいな」と思えるものを複数見つけることに集中してください。
同じ物件が複数の会社から掲載されていたら、それらもすべてリストに加えておきましょう。

ステップ2：複数社にメールで問い合わせ＆諸費用の見積もりを依頼

リストアップした物件を扱う不動産会社の中から、対応が良さそうな2〜3社に絞り、問い合わせをします。
この時、電話ではなくメールでの問い合わせをおすすめします。
なぜなら、やり取りの記録が残り、後から冷静に比較検討できるからです。

問い合わせの際には、内覧希望の旨と合わせて、必ず「購入時諸費用の概算見積もり」を依頼しましょう。

ステップ3：見積もり内容を徹底比較！不要な項目はここで見抜く

各社から見積もりが届いたら、いよいよ比較検討のフェーズです。
総額だけを見るのではなく、必ず項目の内訳を細かくチェックしましょう。

この段階で、不必要なオプションを付けている会社や、質問に対して誠実に答えてくれない会社は候補から外していくのが良いでしょう。

ステップ4：内覧は1社に絞るべき？複数社に依頼する際のマナー

「同じ物件を違う会社で何度も内覧するのは気が引ける…」と感じる方も多いでしょう。
基本的には、見積もりの内容やメールの対応が最も良かった1社に絞って内覧を依頼するのが、最もスムーズで効率的です。

もし、どうしても複数社の担当者と会って比較したい場合は、正直に「他社さんにも同じ物件の案内をお願いしています」と伝えておくのがマナーです。
誠実な姿勢で接することで、不動産会社側も真剣に対応してくれる可能性が高まります。

ステップ5：購入申込みと価格交渉のタイミング

気に入った物件が見つかったら、いよいよ購入申込み（買付申込書の提出）のステップです。
ここで重要なのは、価格交渉を含めた条件面での交渉です。
信頼できる担当者であれば、売主側との交渉を粘り強く行ってくれます。

この最終段階で、担当者の真価が問われます。
あなたの利益を最優先に考え、売主側と対等に交渉してくれる担当者こそが、本当に信頼できるパートナーと言えるでしょう。

チェックリストで一目瞭然！信頼できる不動産会社・避けるべき会社の特徴

最終的にどの会社に任せるか決める際には、費用だけでなく、その会社や担当者が信頼に足る相手かどうかを見極めることが非常に重要です。
ここでは、その判断基準となる具体的な特徴をチェックリスト形式でご紹介します。

【契約してOK】信頼できる不動産会社・担当者の特徴7選

以下の項目に多く当てはまる会社は、あなたの部屋探しを力強くサポートしてくれるパートナーになる可能性が高いでしょう。

【要注意】避けるべき「やばい」不動産会社・担当者の特徴5選

反対に、以下のような兆候が見られた場合は、その会社との契約は慎重に検討すべきです。

「同じ物件・違う不動産」に関するQ&A

最後に、このテーマに関してよくある質問とその回答をまとめました。
あなたの疑問や不安の解消に役立ててください。

Q1. A社で内覧した物件を、仲介手数料が安いB社で購入することはできますか？

A. 法律的には可能ですが、トラブルの原因になる可能性があるため注意が必要です。

先に内覧案内をしてくれたA社には、時間と労力がかかっています。
その労力を無視して仲介手数料の安さだけでB社と契約すると、A社から心証を悪く持たれる可能性があります。
もしどうしてもB社で契約したい場合は、まずA社に正直にその旨を伝え、丁重にお断りを入れるのが筋道です。
誠実な対応を心がけることが、無用なトラブルを避ける鍵となります。

Q2. 不動産会社によって住宅ローンの審査結果は変わりますか？

A. 基本的には変わりませんが、提携金融機関の優遇金利や担当者のサポートで有利になる可能性があります。

住宅ローンの審査を行うのは金融機関であり、不動産会社によって審査基準が変わることはありません。
ただし、不動産会社が金融機関と提携している場合、通常より低い金利で借入れができたり、審査がスムーズに進んだりすることがあります。
また、経験豊富な担当者は、お客様の属性に応じて最適な金融機関を提案してくれるため、結果的に審査に通りやすくなるケースもあります。

Q3. 同じ物件なのに、不動産会社によって販売価格が違うことはありますか？

A. 基本的には同じ価格ですが、諸費用込み価格として表示される場合や、キャンペーン価格が適用される場合があります。

同じ物件の販売価格は売主が設定するため、どの不動産会社でも基本的には同額です。
ただし、一部の不動産会社では「諸費用込み価格」として表示したり、「仲介手数料無料キャンペーン」などで実質的な購入価格を下げたりしている場合があります。
価格表示の内容をよく確認し、総額でいくらかかるのかを比較することが重要です。

Q4. 話に出てきた「囲い込み」って何ですか？購入者にはどんな影響がありますか？

A. 「囲い込み」とは、売却を依頼された不動産会社が、他社からの購入希望者を意図的に排除し、自社で買主を見つけようとする行為です。

囲い込みが行われると、本来なら購入できたはずの物件が「商談中」などの理由で紹介されない可能性があります。
購入者側としては、気になる物件が長期間売れ残っている場合や、問い合わせても曖昧な返事しか得られない場合は、囲い込みが疑われます。
この「囲い込み」は、2025年1月から宅地建物取引業法に基づき、正式に行政処分の対象となるなど規制が強化されています。

Q5. 購入後のアフターサービスは不動産会社によって違いますか？

A. 大きく異なります。充実したアフターサービスを提供する会社を選ぶことで、購入後も安心して住み続けることができます。

不動産会社によっては、購入後の設備故障対応、定期点検サービス、リフォーム相談、将来の売却相談など、様々なアフターサービスを提供しています。
特に中古物件の購入では、購入後のトラブルに備えた保証サービスの有無は重要な判断材料となります。
契約前に、どのようなアフターサービスが受けられるのかを必ず確認しておきましょう。

まとめ：情報戦を制して、賢くお得に理想の部屋を見つけよう

「同じ物件を違う不動産会社が紹介している」という状況は、一見すると複雑で分かりにくいかもしれません。
しかし、その仕組みを正しく理解すれば、むしろ私たち消費者にとっては有利な条件を引き出すチャンスになります。

この記事の重要なポイントをもう一度おさらいしましょう。

不動産取引は情報戦です。
正しい知識を身につけ、賢く行動することで、あなたは費用を抑え、安心して新生活をスタートさせることができます。
この記事が、あなたの理想の住まい探しの一助となれば幸いです。