住宅取得資金贈与は両親それぞれからOK?非課税枠は増えない?夫婦で最大2,000万円にする方法と注意点

「マイホームの頭金が少し足りない」「両親が援助してくれるみたいだけど、贈与税が心配」――そんな不安を感じている方は少なくありません。住宅購入は人生でも大きな資金計画のひとつだからこそ、使える制度はしっかり理解しておきたいところです。
この記事では、親や祖父母から住宅購入資金の援助を受ける際に活用できる「住宅取得等資金の贈与税の非課税特例」について、基本ルールから活用テクニック、注意点、申告の流れまで分かりやすく解説します。父母それぞれから贈与を受けるケースや、夫婦それぞれが親から援助を受けるケースも含め、失敗しない考え方を整理しています。
この記事の目次
まず結論:父と母からそれぞれ贈与を受けても、あなた1人の非課税枠は増えない
最初に結論です。お父様から500万円、お母様から500万円というように、複数の直系尊属から贈与を受けたとしても、あなた1人に適用される住宅取得等資金の非課税枠が2倍になるわけではありません。
この特例の非課税限度額は、「誰からもらったか」ではなく「誰がもらったか」で判定されます。つまり、受贈者1人ごとに、省エネ等住宅なら最大1,000万円、それ以外の住宅なら最大500万円までです。
つまり、「父からいくら、母からいくら」ではなく、「自分が合計いくら受け取ったか」で非課税枠を見るのがポイントです。この考え方を最初に押さえておくと、制度全体がぐっと理解しやすくなります。
| 贈与の受け方 | 贈与額の合計 | あなたの非課税枠(省エネ等住宅) |
|---|---|---|
| 父から1,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 父から500万円、母から500万円 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 祖父母から合計1,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 |
なお、過去に平成21年分から令和5年分までの贈与税申告でこの非課税特例を使っている場合は、今回の適用に制限がかかるため注意が必要です。
【知らないと損】非課税枠を最大限に活用する3つの考え方
まずは用語をやさしく整理しましょう
この制度を理解するうえで、まず押さえておきたい言葉が4つあります。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 贈与者(ぞうよしゃ) | お金や財産をあげる人。親や祖父母など。 |
| 受贈者(じゅぞうしゃ) | お金や財産をもらう人。子や孫など。 |
| 暦年課税(暦年贈与) | 1年間の贈与合計で税額を計算する基本ルール。年間110万円まで非課税。 |
| 相続時精算課税 | 条件を満たす親や祖父母からの贈与で選択でき、将来の相続時にまとめて精算する制度。 |
簡単にいうと、暦年課税は「毎年ごとに考える制度」、相続時精算課税は「将来の相続まで含めて考える制度」です。
1人分の非課税枠は増えなくても、制度の組み合わせ方によっては、家計全体で使える非課税メリットを大きくできます。ここでは代表的な考え方を3つ紹介します。
考え方①:夫婦それぞれが自分の親から贈与を受ける
非課税枠は受贈者ごとに判定されるため、夫が夫の親から、妻が妻の親から贈与を受ければ、夫婦それぞれの非課税枠を使えます。省エネ等住宅であれば、世帯全体で最大2,000万円まで非課税枠を活用できる可能性があります。
| ケース | 夫の非課税枠 | 妻の非課税枠 | 世帯合計の非課税枠(省エネ等住宅) |
|---|---|---|---|
| 夫だけが親から贈与を受ける | 最大1,000万円 | 0円 | 最大1,000万円 |
| 夫婦それぞれが自分の親から贈与を受ける | 最大1,000万円 | 最大1,000万円 | 最大2,000万円 |
この場合は、実際の資金負担割合に応じて共有名義・持分割合を設定することが大切です。出資額と持分が大きくズレると、別の贈与とみなされるリスクがあります。
考え方②:暦年課税の基礎控除110万円と組み合わせる
住宅取得等資金の非課税特例を使ったうえで、残額や別の贈与については、通常の暦年課税における年間110万円の基礎控除を活用できるケースがあります。省エネ等住宅なら、1,000万円+110万円=最大1,110万円まで非課税で受け取れる形になる場合があります。
| 制度の組み合わせ(省エネ等住宅の場合) | 計算イメージ | 非課税となる合計額の目安 |
|---|---|---|
| 住宅取得等資金の特例のみ | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 特例+暦年課税の基礎控除 | 1,000万円+110万円 | 1,110万円 |
考え方③:相続時精算課税と併用する
高額な援助を受ける場合は、住宅取得等資金の非課税特例と相続時精算課税を併用できるケースがあります。相続時精算課税は贈与者ごとに判定され、住宅取得等資金の非課税特例を適用したうえで、なお課税対象となる部分について、相続時精算課税の基礎控除110万円や特別控除2,500万円を使う流れになります。
ただし、使える金額は贈与額や誰から受けるかによって変わるため、誰でも必ず最大3,610万円まで使えるわけではありません。大きな資金援助を受ける場合は、事前に税理士や税務署へ確認しておくと安心です。
| 控除の順番 | 制度名 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1番目 | 住宅取得等資金の非課税特例 | 最大1,000万円(一般住宅は500万円) |
| 2番目 | 相続時精算課税の基礎控除 | 年間110万円 |
| 3番目 | 相続時精算課税の特別控除 | 累計2,500万円 |
| 合計イメージ | ケースによって最大3,610万円まで活用できる場合あり |
ただし、相続時精算課税は一度選択すると、その贈与者からの贈与については以後、暦年課税へ戻せません。将来の相続税まで含めて影響するため、利用前に全体の資金計画を確認しておくことが大切です。
そもそも「住宅取得等資金の贈与税の非課税特例」とは?制度の基本
この制度は、父母や祖父母などの直系尊属から、住宅の新築・取得・増改築のための資金援助を受けたとき、一定額まで贈与税が非課税になる制度です。若い世代の住宅取得支援を目的として設けられています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税 |
| 対象となる贈与 | 住宅の新築・取得・増改築等の対価に充てるための金銭 |
| 適用期間 | 2026年12月31日まで |
非課税限度額はいくら?
非課税限度額は、取得する住宅が省エネ等住宅に該当するかどうかで異なります。
| 住宅の種類 | 非課税限度額 |
|---|---|
| 省エネ等住宅 | 1,000万円 |
| それ以外の住宅 | 500万円 |
なお、省エネ等住宅とは、省エネ・耐震・バリアフリーのいずれかで一定の基準を満たす住宅のことです。新築か中古かで細かな基準は異なりますが、いずれも住宅性能証明書などの書類で証明する必要があります。
【チェックリスト】特例を利用できる人・住宅の条件
この特例は、誰でも自由に使えるわけではありません。受贈者の条件と住宅の条件の両方を満たす必要があります。
贈与を受ける人の主な条件
| チェック項目 | 条件の内容 |
|---|---|
| 贈与者との関係 | 父母や祖父母など直系尊属からの贈与であること。配偶者の親は原則対象外です。 |
| 年齢 | 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること。 |
| 所得 | 合計所得金額が2,000万円以下であること。なお、住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下であること。 |
| 居住要件 | 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること、または同日後遅滞なく居住することが確実と見込まれること。なお、翌年12月31日までに居住していない場合は、原則として特例を受けられません。 |
| 取得・充当要件 | 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、もらったお金の全額を住宅の新築・取得・増改築に充てること。あわせて、その住宅を自分が所有すること(共有持分を持つ場合を含む)。 |
| 過去の利用歴 | 平成21年分から令和5年分までの贈与税申告で、この非課税特例を利用していないこと(一定の場合を除く)。 |
住宅の主な条件
| チェック項目 | 条件の内容 |
|---|---|
| 床面積 | 登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下であること。 |
| 居住用割合 | 床面積の2分の1以上が受贈者の居住用であること。 |
| 中古住宅の要件 | 昭和57年1月1日以後に建築されたもの、または耐震基準適合の証明等があるもの。 |
| 増改築等の場合 | 工事後の床面積要件を満たし、一定の工事証明等が必要。工事費は100万円以上であること。 |
失敗しない!贈与から申告まで5つのステップ
制度を使うには、贈与を受けただけで終わりではありません。証拠を残し、期限内に住宅取得と申告を行う必要があります。
ステップ①:贈与契約書を作成する
誰から誰へ、いつ、いくら贈与したのかを明確にするため、贈与契約書を作成しておくと安心です。後日の説明資料としても役立ちます。
ステップ②:銀行振込で資金を受け取る
現金手渡しよりも、銀行振込など記録が残る方法で受け取るのがおすすめです。通帳や入出金明細が証拠になります。
ステップ③:期限内に住宅取得・入居を進める
- ▪ 資金を充てる期限:贈与を受けた年の翌年3月15日までに、もらったお金の全額を住宅の新築・取得・増改築に充てること
- ▪ 居住の目安:翌年3月15日までに居住、またはその後遅滞なく居住する見込みがあること
- ▪ 最終確認の期限:翌年12月31日までに居住していない場合は、原則として特例を受けられない
建売住宅や分譲マンションは、引渡し時期や入居時期がずれることもあるため、契約前にスケジュールをしっかり確認しておくことが大切です。
ステップ④:必要書類を準備する
| 書類の種類 | 主な入手先 |
|---|---|
| 贈与税の申告書 | 国税庁ホームページ・税務署 |
| 戸籍関係書類 | 市区町村役場 |
| 売買契約書・請負契約書の写し | 不動産会社・建築会社 |
| 登記事項証明書または不動産番号情報 | 法務局 |
| 住宅性能証明書など | 建築会社・不動産会社・評価機関 |
ステップ⑤:贈与税の申告を行う
贈与税額が0円でも申告は必要です。非課税特例は、申告書と添付書類を提出して初めて適用されます。
- 申告期間:贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで(土日祝の場合は翌開庁日)
- 提出先:受贈者の住所地を管轄する税務署
よくある失敗と注意点
制度自体は有効ですが、細かなルールを見落とすと適用できなくなることがあります。特に次の点は事前に確認しておきましょう。
| 注意点 | 押さえておきたいポイント |
|---|---|
| 1. 非課税枠の考え方を誤解する | 父母の人数分ではなく、受贈者ごとの上限です。 |
| 2. 配偶者の親から受ける贈与を対象だと思う | 原則として、自分の親や祖父母など直系尊属からの贈与だけが対象です。 |
| 3. 持分割合を適当に決める | 共有名義にする場合は、出資割合に応じた持分にするのが基本です。 |
| 4. 住宅取得や入居の期限に遅れる | 翌年3月15日・翌年12月31日という期限を意識し、契約・引渡し・入居を逆算して進めましょう。 |
| 5. 税額0円なら申告不要と思う | この特例は申告が前提です。未申告では適用できません。 |
| 6. 相続時精算課税を軽く選ぶ | 一度選択すると、その贈与者については暦年課税へ戻せません。将来の相続も見据えて検討が必要です。 |
よくある質問Q&Aとまとめ
Q. 配偶者の親からの贈与も対象になりますか?
A. 原則として対象になりません。対象になるのは、自分の父母や祖父母などの直系尊属からの贈与です。夫婦それぞれが援助を受ける場合は、夫は夫の親から、妻は妻の親から受ける形にする必要があります。
Q. 父と母の両方からもらえば、非課税枠は2倍になりますか?
A. なりません。非課税限度額は受贈者ごとの上限です。ただし、夫婦それぞれが自分の親から贈与を受ける形なら、世帯全体で使える枠を広げられます。
Q. 税金がかからないなら申告しなくても大丈夫ですか?
A. いいえ。非課税特例を使うには、贈与税額が0円でも申告が必要です。必要書類をそろえて期限内に提出しましょう。
住宅取得等資金の贈与は、マイホーム購入を大きく後押ししてくれる制度です。ポイントは、「誰からもらうか」より「誰がもらうか」で非課税枠が決まること、そして申告と期限管理が必須であることです。
制度の仕組みを理解しておけば、ご家族からの援助をより有利に活用できます。共有名義の持分や相続時精算課税の選択など、個別判断が分かれる場面では、税理士などの専門家に相談しながら進めると安心です。
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